372 1月1日〜1月15日 373 1月16日〜1月31日 季語のない世界となりしマスクかな 374 2月1日〜2月15日 375 2月16日〜2月28日 376 3月1日〜3月15日 377 3月16日〜3月31日 378 4月1日〜4月15日 379 4月16日〜4月30日 380 5月1日〜5月16日 381 5月16日〜5月31日 382 6月1日〜6月15日 383 6月16日〜6月30日 384 7月1日〜7月15日 385 7月16日〜7月31日 386 8月1日〜8月15日 387 8月16日〜8月31日 388 9月1日〜9月15日 389 9月16日〜9月30日 390 10月1日〜10月15日 391 10月16日〜10月31日 392 11月1日〜11月15日 393 11月16日〜11月30日 394 12月1日〜12月15日 395 12月16日〜12月28日
2021年 令和3年
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【宝船】
宝船揺れて女将の帯飾り
浪裏の富士に願うや宝船
【マスク】
マスク越しぁ・うんで語る老夫婦
鬢付けの香りを残しマスク行く
【雪達磨】
雪だるま丸い地球と三つ重ね
雪達磨笑顔泣顔思案顔
【牡蠣】
牡蠣打ちの強き老婆の背中かな
「カキフライ始めました」に並びをり
【春の暮】
消えかけの名誉看板春の暮
母牛の頭をたれし春の暮
【椿】
雨あがる飛び石ごとの落椿
猫の忌や椿一輪窓に寄せ
【風船】
アルバムに挟みし祖母の紙風船
打つ音の少しさびしい紙風船
水まくら薬は苦し紙風船
【雲雀】
ひばり啼きスカートからげて瀬をわたる
外野手の止まぬ欠伸や夕雲雀
【香水】
細胞が震える香水の記憶
香水や黙礼交わし去りし君
【虹】
銃撃戦三分止んだ虹の下
侘び住まい猫の尻尾と窓の虹
片脚はビルの谷底夕の虹
【跣足】
寝ころびて裸足で撫ぜる犬の腹
魚籠(びく)提げて跣足で帰る田圃道
【破れ傘】
束の間の虫の逢瀬や破れ傘
破れ傘跨ぎ異界へ歩き出す
【汗】
藍染めの藍深くして僧の汗
禅堂に汗一筋の修証(しゅしょう)かな
【梅酒】
ただ一人二人で漬けし梅酒飲む
【露】
満点の星は足もと草の露
【鬼灯】
鬼灯やひとりで遊ぶ午後流し
鬼灯や少女の嘘の二つ三つ
【蓑虫】
妻去りて蓑虫揺るるばかりなり
【とろろ汁】
おだやかな暮らし守りてとろろ汁
ときめきはとうのむかしさとろろ汁
胃の腑へとのんびり急ぐとろろ汁
【燕帰る】
秋燕空の牛舎を残しけり
球宴の空を舞い飛ぶ秋燕
【木の実】
ブランコに並び置かれた木の実二つ
木の実降るこの集落に人はいず
【新酒】
和解なき父の位牌や新酒注ぐ
人生をひとまず置いて新酒かな
会うたびに初めましての新酒かな
【炬燵】
炬燵からはい出る朝の白さかな
庭先で犬が見ている炬燵かな
【冬の夜】
冬の夜や白紙のままの遺言状
アルバムをめくれば昭和冬の夜
【冬うらら】
冬麗や高尾に座して富士と呑む
冬うらら介護ベッドの脚の跡
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